絶対に守る!雛人形・五月人形の防虫について
こんにちは、ライターの千田です。
各地でまとまった量の雨が降り続き、雷の音が聞こえるようになりました。梅雨明けまでもう少し。お雛様や五月人形は今年の役目を終えて、ゆっくりお休み中の時期です。
……が!!
この時期、お人形を狙う厄介者が出現します。
それは衣類害虫です。
【衣類害虫とは】
布や着物など、繊維製品を主食とする虫の総称。衣類などに穴を空け、日常の暮らしに害を与えることから、生活害虫とも呼ばれます。
彼らは静かに忍び寄り、我々に気づかれることなく被害を拡大させていきます。翌年にお人形を出してみてびっくり……という悲劇も少なくありません。
今回は、衣類害虫の虫食いを徹底的に阻止する虫除けの方法について書いていこうと思います!
この記事を読んで、虫たちの魔の手から大切なお人形を守りましょう!
日本の衣類害虫
日本で見られる衣類害虫は主に以下の4種類です。
「ヒメマルカツオブシムシ」「ヒメカツオブシムシ」「イガ」「コイガ」
前者の「カツオブシムシ」はテントウムシなどの甲虫の仲間で、「イガ」「コイガ」は蛾の仲間に属しています。
いずれも繊維製品を食害するのは幼虫のみです。
なかでもヒメマルカツオブシムシは非常によく見つかる虫で、4種類のうち最も被害が多いといわれています。衣類の上やタンスの中に、写真の虫がいたら要注意。
写真を見る勇気がない方のために、文章とイラストでも説明しましょう。
ヒメマルカツオブシムシの成虫はテントウムシのような姿で、体長は2.5mmほど。白と茶色のまだら模様をしています。キク科の花に集まり、花粉や蜜を食べます。
幼虫は体長4~5mm程度の大きさです。
褐色で細かい毛が生えており、ずんぐりした芋虫のような姿をしています。脱皮を繰り返すので、抜け殻が一緒に見つかることもあります。
その他3種類の衣類害虫についても簡単に紹介しておきます。
📌ヒメカツオブシムシ
体長3.5~5.5mm、黒色で楕円型の甲虫です。幼虫は7~10mm程度のサイズで、赤褐色の毛で覆われた芋虫のような形状をしています。尾に長い毛束を持ち、外敵に襲われるとこの毛束を切り離して相手に絡ませます。
ヒメマルカツオブシムシと同様、幼虫は脱皮を繰り返しながら繊維製品を食害し、約10ヶ月で成虫となります。
📌イガ
イガは漢字で「衣蛾」と書きます。成虫の体長は約5mmで、淡灰褐色の羽を持ちます。静止時は羽をたたむので、上から見ると長三角形の姿をしているのが特徴です。
5月から10月にかけて産卵し、年に2、3回発生します。一度の産卵数は40個程度です。
幼虫は体長7mmほどの淡黄白色で、衣類などの繊維を食べます。食べた繊維の残りでミノムシのように巣を作ってその中に入り、巣ごと移動します。巣は食べた繊維と同じ色になるため、毛玉と見分けがつきにくいのが厄介です。
📌コイガ
イガとよく似た姿で、同じような生態をもちます。名前からコイガの方が小さいと思われがちですが、成虫のサイズは6‐8mmと、イガよりひと回り大きくなります。
一度の産卵数は70個程度です。メスは飛翔能力が弱く、地面を這うように移動します。
巣ごと移動をするイガとは異なり、コイガの幼虫は暗く埃っぽい場所にトンネルのような固定型の巣を作ります。
どんな繊維製品を食べるのか?
衣類害虫の幼虫は意外とグルメ。布製品のなかにも好物とそうでないものとがあります。
好んで食べるもの
ウールや絹、カシミヤなどの動物性繊維
好まないもの
ポリエステル、ナイロンなどの化学繊維、コットンなどの植物性繊維
幼虫は、たんぱく質を栄養源として育ちます。そのため、羊からとれるウールや蚕の繭でできた絹など、動物性たんぱく質が含まれた布製品が被害に遭いやすいようです。
よく絹が用いられる雛人形や五月人形は、衣類害虫にとって格好のごちそう。油断していると、衣装やお人形の髪の毛などが食い荒らされてしまいます。
じゃあ、衣類害虫が好まない化学繊維なら食害に遭わないってこと?
実はそういうわけでもないんです。前述した通り、衣類害虫の好物はたんぱく質。服に食べこぼしや垢などの汚れが残っていると、化学繊維であっても食べられてしまいます。
また、イガ類やヒメカツオブシムシは植物性繊維を食べない傾向にあるのに対し、ヒメマルカツオブシムシは木綿なども食害します。
好みはあれど、基本的にはすべての布製品が被害に遭う可能性があるというわけです。
衣類害虫はどこから入ってくる?
カツオブシムシもイガの仲間も、成虫は屋外に生息しています。知らない間に家の中に入り込んで悪さをする彼らは、いったいどこからやってくるのでしょうか。
その侵入経路をいくつか見てみましょう。
1.飛来してきて扉や窓のすき間から入り込む
イガやコイガの成虫は、野鳥の巣に多く潜んでいます。
家の付近にツバメなどの巣がある場合、窓やドアを開けた際に飛来してきた成虫が入ってきてしまうことがあります。屋内に侵入した後は狭くて暗い所へ隠れようとするので、なかなか見つけられません。
2.成虫や卵が洗濯物と一緒に取り込まれる
白や薄いピンクの花に集まるヒメマルカツオブシムシは、シーツなどの白い洗濯物にくっついていることがあります。
また、飛来してきたイガ類が干してあるタオルや衣服に産卵し、洗濯物を取り込んだ際に家の中に入れてしまうケースも考えられます。
3.花や服にくっついている
マーガレット、デイジーなどのキク科の花や、白い花にはカツオブシムシがついている場合があります。特に野外から摘んできた花は要注意です。
白いTシャツなどを着て屋外を歩いて、くっついたカツオブシムシに気がつかず一緒に帰宅してしまうことも。
今日からできる!衣類害虫対策
大切な節句飾りを衣類害虫から守るにはどうすれば良いのか。ここからは、今日から始められる対策をご紹介します。
①卵と成虫を家に侵入させない
当たり前のことですが、卵と成虫を家に入れなければ幼虫が発生する心配はありません。
少し注意して生活するだけで、侵入の確率はぐっと下がります。
・換気の際は網戸を開ける
・玄関先など、ドア付近には虫の忌避剤を設置する
・家に入るときは服や持ち物に成虫がくっついていないか注意する
・洗濯物を取り込むときは軽く振り、成虫を払い落とす
イガの卵はぽろぽろと落ちやすいので、ブラシなどで衣類を軽くなでると簡単に取り除くことができます。
また衣替えを行う際にはアイロンや乾燥機で衣類に熱を通し、卵をやっつけてからタンスにしまうのも効果的です。
②お部屋をキレイに保つ
衣類害虫の幼虫たちは、埃っぽい場所を好みます。埃に絡まった皮脂や食べかすをエサにしますし、イガ類の幼虫は積もった埃を利用して巣を作ることもあります。
雛人形・五月人形の保管場所は定期的に掃除と換気をして、幼虫たちが居つかないようにしましょう。
③防虫剤を正しく使う
防虫剤は、節句飾りを守るうえで心強い味方です。正しく使えば素晴らしい防虫効果をもたらしてくれますが、誤った使用はかえってお人形を傷める原因になるので注意が必要です。
防虫剤の種類はその主成分で分けられており、主に4種類あります。
「ナフタリン」「樟脳(しょうのう)」「パラジクロロベンゼン」「ピレスロイド系」
それぞれ長所と短所があり、臭いの有無や効き目の強さ、持続期間もまちまちです。
防虫剤を設置すると、薬剤の成分が気化して空間に充満し、害虫の発生を防いでくれます。気化した薬剤は空気よりも重く、下に沈む性質があります。したがって防虫剤をお人形よりも上に置くと、より高い防虫効果を得られるでしょう。
雛人形・五月人形に防虫剤を使用する際は、次の4つの点に留意するようにしてください。
1.人形用の防虫剤を使う
衣類用ではなく、人形用の防虫剤を使用してください。
表にも書かれている通り、プラスチックを変質させるものや金属を変色させるものなど、防虫剤の作用は主成分によってさまざまです。衣類用のタイプを使用すると、お人形の顔やお飾りを傷めてしまうかもしれません。
また、五月人形の鎧や兜はメッキが浮いたり金具が変色したりする可能性があるため、防虫剤の使用は望ましくありません。
どうしても防虫剤を入れたいときは、お人形に直接触れないよう距離を離して、ごく少量を用いるようにしてください。
2.人形やお飾りに直接触れないように設置する
お人形やお飾りに防虫剤が直接触れないようにしてください。和紙などで節句飾りを包み、保護すると良いでしょう。
3.異なる主成分の防虫剤は併用しない
ピレスロイド系以外の防虫剤は、別々の種類を一緒に使用してはいけません。お互いに反応し合うので、お人形の衣装を変色させたり、メッキを剥がしたり、薬剤が溶けてシミになったりするおそれがあります。
4.毎年同じ防虫剤を使用する
前述したように、防虫剤は薬剤がガスとなって空間に満ちる仕組みになっています。
防虫剤を交換する際、前回と異なる主成分のものを設置すると、空間に残っているガスと新たな成分が反応してお人形を傷める可能性があります。
毎年同じ成分の防虫剤を使用するよう心がけましょう。どうしても別のタイプに切り替えたい場合は、収納する空間をしっかり換気し、ガスの残留がないようにしてください。
防虫剤のニオイが気になるときは
防虫剤は便利だけど、飾るときにお人形にニオイが染みついてイヤだな……
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ほとんどの防虫剤は揮発性なので、風通しの良い場所に置くとニオイは取れていきます。飾る数日前に一度陰干しを行うと良いでしょう。色落ちを避けるため、直射日光の当たらない場所に置いてください。
陰干しする時間がない場合は、ドライヤーの冷風を軽く当ててみてください。応急処置ではありますが、ひとまず表面のニオイは取ることができます。
お人形はデリケートなので、風量やドライヤーとの距離に十分ご注意ください。
④秋には虫干しを!
9月か10月頃になったら、お人形を一度出して虫干しを行うことをオススメします。湿気の付着を避けるため、必ずカラッと晴れた日を選んでください。
虫干しのやり方
①お人形を取り出し、毛ばたきで埃を払います。細かな部分は綿棒や筆を使用して汚れを落としてください。
手の皮脂がカビ・サビの原因になるので、お人形を触る際は必ず手袋を着用してください。
カビやサビへの対処法については、こちらの記事が参考になるかもしれません。
②日の高いうちに2時間ほど、直射日光の当たらない風通しの良い場所に出しておきます。この時、収納場所の扉も開けて風を入れましょう。
お人形を取り出すのが面倒なときは、収納場所の扉を開けておくだけでもOKです。
虫干しを行う時間帯は、湿気の少ない10時~15時頃がオススメです。
③お人形を元の場所にしまいます。防虫剤を使っているご家庭は、この際に交換を行うとより効果的です。次の交換時期を忘れないようにしましょう。
まとめ
人知れず節句飾りを狙う衣類害虫。成虫が発生している今の時期は特に気をつけたいですね。雛人形や五月人形をいつまでも美しく飾れるよう、日ごろからしっかりと対策を行っていきましょう!
記事を共有する