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雛人形や五月人形のうしろに屏風を立てるのはなぜ?

2023.03.08

こんにちは。寒さも緩み、飛び回る花粉に恐れをなす時期になりましたね。

花粉の侵入を少しでも阻もうと、我が家ではカーテンをしっかりと閉めたまま窓を開けています。無意味だと分かってはいるのですが、何となく「防げてる」感じがするのです。

防ぐといえば、古くから日本で使われてきた屏風は「風を屏(しりぞ)ける」と書きます。風の通りを遮る役目をもち、部屋の仕切りとしても使用される調度品です。

そしてこの屏風、雛人形や五月人形のうしろに立てられているのを目にすることがありますよね。いったいどうしてなのかご存知でしょうか?

屏風たちは何気なく立っているわけではなく、ちゃんとした意味と役割をもっているんです。

今回は、節句飾りに華を添える屏風について書いていきたいと思います!

日本における屏風

屏風は大陸から伝来してきたもので、文献上では『日本書紀』のなかに初めてその記述があらわれます。

戊子、新羅進調、從筑紫貢上、細馬一匹・騾一頭・犬二狗・鏤金器、及金銀霞錦綾羅虎豹皮、及藥物之類、幷百餘種。亦智祥・健勳等、別獻物、金銀霞錦綾羅金器屏風鞍皮絹布藥物之類、各六十餘種、…(『日本書紀』第二十九巻 天武天皇 下)

【現代訳】戊子の日、新羅の贈り物が筑紫から届いた。良い馬一頭・ラバ一頭・犬二匹・金細工の器、および金銀、錦織物、薄絹織物、虎と豹の皮、あわせて百種類あまり。
また
智祥・健勳たちが別に贈ったものは、金銀、絹織物、薄絹織物、金器、屏風、鞍皮、絹の布、薬物の類、各六十種類あまり、……

上記は686年(朱鳥元年)、天武天皇へ新羅(現在の朝鮮半島南東部)からたくさんの贈り物が届いた際の記述です。金銀や織物と並んで「屏風」の文字が見えますね。南北朝時代の中国において、屏風は贅沢な装飾品として扱われていました。

屏風が伝わってきてからは日本でも制作されるようになり、平安時代には貴族の邸宅に欠かせない調度品となっていきます。

当時は、皮の紐で屏風の面同士を繋ぎ合わせたものが主流でした。部屋同士の仕切りとして用いたほか、絵や和歌が描かれたものを眺めて楽しんでいたようです。

鎌倉~室町時代になると紙製の蝶番(ちょうつがい)が生まれ、現代と同じ手軽に折りたためるスタイルになりました。水墨画を描いたものや、華やかな極彩色で風景を描いたものなどが流行し、屏風の芸術的な地位は高まっていくことになります。

江戸時代になる頃には、屏風は装飾品としてだけでなく庶民の身近な調度品としても認識されていました。

江戸時代中期の人気画家であった鳥山 石燕(とりやま せきえん)は、妖怪画集『今昔百鬼拾遺』のなかで「屏風闚(びょうぶのぞき)」という妖怪を登場させています。

妖怪「屏風闚」
屏風の外側から人を覗き込む妖怪。7尺(約2m)ある屏風の向こうでも覗くとされる。

この妖怪、一説によると寝室の屏風が付喪神(長く使われた道具などに精霊が宿った状態)になったものだといわれています。屏風が人々の生活に溶け込んでいたことが分かりますね。

おめでたい場の「金屏風」

室町時代頃、一面に金箔を貼った金屏風が誕生します。金色は古くから永遠や豊かさを象徴する縁起の良い色であり、魔除けの効果があるとされてきたため、江戸時代に入ってからは儀式や婚礼の席で用いられるようになりました。

幕府の御用絵師「狩野探幽」(かのうたんゆう)が手がけた「桐鳳凰図屏風」(きりほうおうずびょうぶ)には金箔の背景に雌雄の鳳凰が描かれており、4代将軍徳川家綱の婚礼のために制作された屏風であるといわれています。

そのうちに、おめでたい節句のお祝いにもこの風習が持ち込まれ、

女の子の今後の人生が光り輝きますように

男の子の今後の人生が光り輝きますように

という願いを込めて金屏風を立てるようになりました。これが節句飾りのうしろに屏風が立っている由来です。

複雑?屏風の単位

ところで、屏風はどんな数え方をするのでしょうか。一枚、二枚? 答えは……

一隻(いっせき)、二隻……

と数えます。

屏風は複数の面が繋がってできています。この面のことを「扇(せん)」といい、右から第一扇、第二扇と数えます。

屏風はこの扇の数に合わせ、二曲屏風四曲屏風などと呼ばれます。二曲、四曲、六曲の屏風が一般的ですが、まれに三曲や八曲、十曲のものも存在します。

また、芸術作品としての屏風は二隻でひとつの作品になっているものが多く存在します。

屏風を一隻、二隻と数えるのは、「隻」が対になっているものの片方を指すときに使われる助数詞だからです。

二隻でひとつの屏風は、二隻合わせて「一双」と数えられます。例えば二曲屏風が二隻でワンセットとなっている場合は、「二曲一双」と呼ばれます。

日本一有名な屏風ともいわれる「風神雷神図屏風」も二曲一双です。

室町時代頃には、六曲屏風二隻で織りなす「六曲一双」の屏風が定型のひとつとなりました。

「一隻」「一扇」「一双」……少しややこしく感じるかもしれませんが、ルールを覚えてしまえば簡単に見分けることができます。屏風を見かけた際は是非思い出してみてください。

現代節句は屏風もいろいろ

現代のスタイルに合わせた節句飾りが人気を博しているこの頃ですが、それに伴って屏風もさまざまなタイプが登場しています。

金屏風ではなくても、お飾りのうしろに屏風を立てると雰囲気ががらりと変わります。屏風の前は特別な空間となり、雛人形や五月人形が一層見応えのあるものになるでしょう。

また、屏風を立てることで背景が統一され、主役である節句飾りの美しさがより目に入るようになります。

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クールさ抜群の漆黒兜に、マットと艶を格子状にあしらった三角屏風。深みと気品が漂うデザインは、どんなお部屋にもおしゃれに調和してくれます。

屏風には和紙を使用しており、モダンスタイルのなかに和の趣を取り入れました。黒一色で統一された空間のなかに、すらりと伸びた鍬形が鋭く輝きます。

今年の端午の節句は、スタイリッシュなお飾りとともにお祝いしてみませんか?

まとめ

時には華やかな芸術品として、また時には便利な調度品として人々に親しまれてきた屏風。長い年月を経て在り方を変えながらも、現代日本の文化に寄り添っています。

節句飾りを選ぶ際は、主役の美しさを引き立ててくれる屏風にも注目してみると良いかもしれません。お子様の特別な日にふさわしい、とっておきの一点が見つかりますように。

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