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五月人形に用いられる縁起の良い生き物たち【前編】

2023.04.13

突然ですが、皆さん生き物はお好きでしょうか。私はかなり好きな方だと思います。

かっこいい生き物や可愛い動物……思い浮かべるだけでもたくさんいます。我々の周囲にも、動物や生き物モチーフのグッズが溢れていますよね。ユニコーンやアマビエ(生き物?)など、伝説上の存在がモチーフになったグッズも目にします。

五月人形などの節句飾りにも、動物や生き物が描かれているものがあります。今回は、そんな生き物たちがもつ意味や込められた願いについてのお話です。

少し長くなってしまうので、前編・後編に分けて書いていこうと思います!

その①虎

勇猛さの象徴として、よく五月人形の装飾に用いられているのが虎です。

現代ではネコ科の猛獣という認識の虎ですが、古代の中国や韓国といった東洋では「力」や「権威」を司る恐ろしい霊獣で、神に近い存在として畏れられていました。

19世紀前まで野生の虎が数多く生息していた韓国(当時の朝鮮半島)では、「虎」と口に出すと本当に虎が現れてしまうと考え、「山君」や「山神霊」という名で呼んでいたようです。

古代中国では虎の勇ましい姿が軍事と結びつけられることが多く、“虎士”(勇猛な武人)や虎旅”(精鋭部隊)といった言葉も生まれました。

「虎の尾を踏む」ということわざは中国の故事成語が元になっており、「とてつもない危険をあえて冒すこと」の例えとして用いられます。

日本に野生の虎が生息していたことはありませんが、伝来してきた絵や逸話などにより、その存在は古くから知られていました。7世紀頃に成立した日本最古の歌集『万葉集』には、虎について詠んだ長歌が残されています。

伊刀古 名兄乃君 居々而 物尓伊行跡波 韓國乃 云神生取尓 八頭取持来 其皮乎 多々弥尓刺 八重疊 …(『万葉集』第十六巻3885番歌)

【現代語訳】
さあさあ旦那さん、ずっとお家にいなさるのかな。韓の国にでも行ってみなされ。
という怖い神様を八頭も捕らえてきて、その皮を畳のように八重の敷物になさるなんてことは…

「虎云神」の文字から、虎は日本においても神聖な存在として認識されていたことが分かりますね。

また、虎の鋭い眼光は邪気や魔物を追い払う力があるともいわれています。特に正面を向いた虎の姿は「八方睨みの虎」と呼ばれ、八方から押し寄せる悪いものを遠ざける魔除けとして、掛け軸などに描かれます。

節句飾りに用いられている虎には、「虎のように勇ましい子に育ってほしい」という気持ちと、「虎が悪いものを遠ざけてくれますように」という願いが込められているんですね。

【余談】思わぬところに? 韓国の虎

現代の韓国には、昔話の語り始め(日本でいう「昔むかし…」にあたる)として「まだ虎がタバコを吸っていたころ…」というものがあります。

なかなか不思議な表現です。なぜ虎にタバコを吸わせたのか、このルーツはよく分かっていません。

一説によると、18世紀頃、人間の支配階級を強く恐ろしい虎として描いた創作物が生まれたことがきっかけではないかといわれています。虎に具体的な人格や人間性をもたせたことで、タバコを吸うという表現が生まれたのかもしれません。

また、こんな説もあります。

韓国には「両親や上司など、目上の人の前でタバコを吸ってはいけない」というマナーが存在します。

これは皇帝の前でタバコを吸った家臣が叱責を受けた伝説に由来するのですが、朝鮮半島にタバコが入ってきた当初、そのようなマナーは存在しませんでした。そんな時代を懐かしんで、

「野生の虎がタバコを吸っていた時代=人はもちろん虎も関係なくタバコが吸えていた時代=昔むかし」という表現が誕生したというものです。

本当の由来が果たして何だったのかは分かりませんが、こんなところに虎が登場するのは面白いですね。

端午の節句を盛り上げる虎の名前旗

ここで、勇猛な虎をあしらった素敵な節句飾りをご紹介します。

刺繍名前旗 大-祥慶 shoukei-

江戸時代に男児の健康や立身出世を祈って「武者絵のぼり」と呼ばれる幟(のぼり)を飾っていたことが起源とされる名前旗。現代では五月人形と一緒に飾るほか、初節句のお祝いの席でも重宝されています。

猛々しい虎が月夜に咆哮する迫力満点のデザイン。お部屋のお祝いムードがますます引き立ちます。

一点ずつ丁寧に、お子様のお名前と生年月日を刺繍します。飾りやすく、見応えも十分なちょうどいいサイズです。カラーバリエーションは爽やかで洗練された印象の白・クールで迫力溢れる黒の2種類です。

その②龍

伝説上の生き物である龍も、節句飾りのモチーフとして描かれています。

鱗が生えた長い体躯をもち、角と髭があり、手には如意宝珠(願いを叶える宝玉)を持っている姿が一般的な龍。

その姿を形容する言葉として「龍に九似あり」(龍のかたちは九つの生き物に似ている)というものがあります。

角は鹿
頭は駱駝(ラクダ)
目は鬼(一説には兎)
うなじは
腹は蜃(シン/ミズチ)
鱗は
爪は
掌(たなごころ)は
耳は

※蜃…蜃気楼を生み出すとされる伝説上の動物
※掌…手のひら

いかがでしょうか。龍の姿をばっちり想像できたでしょうか。「似ている生き物」といいつつ、鬼や蜃といった実在しないものがちらほら入っているのも面白いですね。

龍の歴史はかなり古く、中国では新石器時代(現代から約7000年前)には既に登場していました。日本にその存在が伝わってきたのは弥生時代後期(現代から約2300年前)だといわれ、龍らしき姿が描かれた土器が全国約80か所の遺跡から出土しています。

「幸運」と「強烈な力」を象徴する非常に縁起の良い生き物であり、天候や水をあやつる力があるとされています。

神聖な存在で、すべてのエネルギーの源ともいわれる龍。中国では龍を醜く描写することがタブーになっています。

龍のアゴ下には一枚だけ逆さまに生えている鱗があり、それに触れてしまうと必ず殺されるという中国故事が存在します。
これが「目上の人を激怒させてしまうこと」を意味する「逆鱗に触れる」の由来です。

【余談】知ってる?「龍」と「ドラゴン」の違い

「龍」の英語表記は「Dragon」です。混同されがちですが、龍とドラゴンは同じ生き物ではありません。

両者には明確な違いがいくつもあります。簡単に表すなら、

「龍は東洋発祥の霊獣で吉兆の生き物」

「ドラゴンは西洋発祥の悪い魔獣」

といったところです。龍は人に幸福をもたらす信仰の対象ドラゴンは人に災いをもたらす討伐の対象と、立場が大きく異なっています。

現代では強くてかっこいい生き物として描写されることが多いドラゴンですが、13世紀頃の西洋には、悪の象徴であるドラゴンを勇者が倒すといった民話が多く残されています。悪魔そのものとして描かれるケースもあります。

対して、東洋の龍は一貫して縁起の良いありがたいものとして扱われています。人間の愚かな行いに対して怒った龍が災いをもたらすという話は存在しますが、無条件に人を傷つけるものとしては描かれません。時には恵みを、時には罰を与える「神」としての位置づけだったようです。

力強い龍をあしらった節句飾り

幸運の象徴で、祝福をもたらすといわれる龍。

五月人形に描かれる龍には、「お子様が幸運に恵まれ健やかに育ちますように」という願いが込められています。

今年の端午の節句のお祝いには、勇ましい龍があしらわれた兜飾りのセットはいかがでしょうか。

 ISSEN 櫃-HITSUNE- SET 玄

燦然と輝く黄金の兜。黒糸で威し、いっそう迫力のある仕上がりになっています。堂々たる鍬形には彫金細工で龍の装飾を施しました。吹返にも勇ましい龍が躍ります。

飾り台には肌目の美しい檜(ひのき)を使用。二段太刀と弓太刀飾りも揃い、主役の兜飾りを豪華に演出します。

後編へ続きます

今回は「虎」と「龍」について書きました。どちらも勇ましさや幸運を象徴する、とても縁起の良い生き物でしたね。

後編でも五月人形のモチーフにふさわしい生き物を紹介していきますので、ぜひご覧ください!

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