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五月人形に用いられる縁起の良い生き物たち【後編】

2023.04.28

こんにちは。ここ最近は上着が不要なほどに暖かくなっていますね。(つかの間の)過ごしやすい気候に浮かれています。

さて、今回は「五月人形に用いられる縁起の良い生き物たち【前編】」の続きです。まだ前編を読まれていない方は、ぜひそちらを先にご覧ください!

前編に続き、節句飾りのモチーフとなる生き物たちの縁起の良さ、込められた願いについて解説していきます。これを読めば、五月人形選びがもっと面白くなるかもしれません。

その③鷹

初夢で有名な「一富士二鷹三茄子」にも登場する鷹(タカ)。非常に縁起の良い生き物として知られており、節句飾りにもよく用いられています。

日本における鷹と人々の関わりは古く、古墳時代に出土した埴輪(はにわ)には手に鷹を乗せているものが存在しているんです。

日本の最も古い史書のひとつである『日本書紀』には、西暦335年の仁徳天皇の時代に初めて鷹狩(鷹を使った狩猟の一種)が行われたという記録が残っています。

卌三年秋九月庚子朔、依網屯倉阿弭古、捕異鳥、(中略)天皇召酒君、示鳥曰「是何鳥矣。」酒君對言「此鳥之類、多在百濟。得馴而能從人、亦捷飛之掠諸鳥。百濟俗號此鳥曰倶知。」是今時也。(中略)是日、幸百舌鳥野而遊獵。時雌雉多起、乃放鷹令捕、忽獲數十雉。(『日本書紀』第十一巻)

【現代語訳】
四十三年の秋、依網(よさみ)の屯倉(みやけ)の阿弭古(あひこ)が妙な鳥を捕まえてきた。(中略)天皇は酒君(さけのきみ)を呼び、「これは何の鳥か。」と尋ねると、酒君は答えて「この鳥の類は百済にたくさんいます。人に馴らすとよく従い、速く飛んでさまざまな鳥を捕らえます。百済ではこの鳥を倶知と呼びます。」と言った。これは現在の
である。
(中略)この日、百舌鳥野で狩りをされた。鷹を放つと、たちまち数十の雉を獲った。

鷹狩は平安時代から江戸時代にかけて盛んに行われ、特に武士の間で好まれていました。今年の大河ドラマでも話題の徳川家康公は、1000回以上鷹狩に出かけるほど熱心だったようです。

鷹を連れた徳川家康像(駿府城)

鷹の視力は人間の6~8倍といわれていて、高い上空からでも簡単に目標を視認することができます。また、獲物を捕らえる際は鋭い爪を食い込ませてしっかり掴みます。鷹の仲間は握力が非常に強く、大型のクマタカなどは100kgを超えます。

クマタカ。翼を拡げると約170cmにもなる大型の鷹です

素晴らしい目の良さは「先を見通す力」

狙った獲物を捕らえて離さないところは「幸運を確実に掴む力」

空高く飛んでいくところは「運気上昇」

このように、その高い能力から鷹は縁起の良い生き物として伝えられるようになりました。

羽は勝利を引き寄せる力があるとして矢などの武具に使われたほか、家紋のデザインにも用いられました。

五月人形などの節句飾りに鷹が用いられるのは、こうした縁起の良さにあやかって男の子の幸運を祈るためなんですね。

【余談】知ってる?タカとワシの違い

鷹と並ぶ猛禽類としてよく名前が挙がる鷲(ワシ)。実はタカとワシは同じタカ目タカ科であり、両者に明確な違いはないとされているんです。一応大きさや微妙な姿の差異で分けられ、

比較的体長が大きく、脚が太くて直線状の短い尾をもっているのがワシ

体長が小さくて脚が細く、扇状の長い尾をもっているのがタカ

……と決まってはいるのですが、前述のクマタカはかなり大きいですし、石垣島などに生息するオオワシは体長55cmと小型です。分類は大まかにされているようですね。

ちなみに、同じ猛禽類で急降下時の速度が新幹線よりも速いことで知られる隼(ハヤブサ)は、「見た目が似ている」との理由でタカの仲間に分類されてきました。

しかし、近年の研究でなんとタカよりインコに近いことが判明。なんとも可愛らしい分類に見直されてしまい、研究者たちを大いに驚かせました。

縁起の良い鷹をあしらった名前旗

前編では勇猛な虎の名前旗をご紹介しましたが、躍動感溢れる鷹を刺繍した名前旗もございます。

刺繍名前旗 大-祥慶 shoukei-

サイズ:横幅16.5cm×奥行11.5cm×高さ56cm

鋭い目つきで獲物を見据える鷹の迫力を、繊細な刺繍で見事に表現しました。カラーバリエーションは2種類、どちらも洗練された美しさが光る逸品です。お手持ちの五月人形の隣にいかがでしょうか?

その④馬

日本の文化に古くから寄り添い、人々の生活に大きく貢献してきた馬。彼らもしばしば節句飾りのモチーフとなります。

弥生時代頃まで日本に馬はいなかったようで、骨や馬具などの出土もありません。古代中国の歴史書『三国志』に書かれた「魏志倭人伝」には、邪馬台国時代の日本について以下のような記述があります。

其地無牛虎豹羊鵲

【現代語訳】
その土地には牛、
、虎、豹、羊、カササギがいない。

日本に馬がやってきたのは古墳時代からで、モンゴル高原から朝鮮半島を通して輸入されたのが始まりといわれています。

5世紀以降には馬は大切な財産とみなされていたようです。古墳には多くの副葬品とともに馬を模した埴輪(はにわ)が納められました。

それからの長い時代、馬は移動手段や農耕において重宝されることになり、日本人にとって「富や繁栄の象徴」としての意味合いを持つことになります。

また、馬は神様の乗り物になる神聖な動物とされ、神社に生きた馬を奉納する風習が生まれました。現代でも京都や大阪など、全国12の神社で馬が飼育されています。

京都の上賀茂神社で暮らす神馬。

経済的負担と世話の手間から、奈良時代以降は生きた馬ではなく、馬のかたちをした土製品「土馬」が納められるようになります。さらに時代が進むと、木の板に馬の絵を描いたものが主流になっていきました。現代の神社でお馴染みの「絵馬」は、これが由来になっているんです。

馬は、神事だけでなく軍事においても非常に重要な役割を担っていました。

移動手段として長きにわたり最速だった馬は、戦の勝敗を大きく左右しました。武士たちにとっては功績を挙げるためには必要不可欠な存在だったのです。特に足が速く能力の高い個体は誰もが欲しがり、権力や名誉の象徴になりました。

このことから、馬は「勝利を運んでくれる吉祥の存在」としての意味ももつようになります。

また、馬にまつわる縁起の良い図柄として「左馬」というものがあります。左馬とは文字通り「馬」の字を左右反対にしたものです。将棋の駒のようなかたちの置物になっているのを、店先などで見かけたことがあるかもしれません。

「うま」を反対から読むと「まう(舞う)」となり、めでたい席での舞を連想させることから縁起物として知られるようになりました。

さらに馬には「左側から乗ると転ばない、倒れない」というジンクスが古くから存在しており、倒れない=安泰な人生を送ることができるとして吉祥の象徴にもなっています。

端午の節句では、こうした縁起の良さから五月人形と一緒に馬飾りを飾ることがあります。男の子の出世や勝利、安泰への願いが込められているんですね。

【余談】馬はニンジンが好きなのか

ご褒美をちらつかせて奮起させることの例えに、「(馬の)鼻先にニンジンをぶら下げる」というものがあります。

なんとなくニンジン大好きなイメージが定着している馬ですが、彼らは本当にニンジンが大好物なのでしょうか?

気になるその答えは……

うーん、角砂糖の方が好き!

野菜でも果物でもなく、大好物が砂糖?! と思われるかもしれませんが、馬は味覚のなかでも甘味を感じる器官が発達しており、彼らは大の甘党。したがって、角砂糖やハチミツが大好物です。

野菜や果物では固くて甘いものを好む傾向にあるため、リンゴなども大好きです。甘みのあるニンジンも好んで食べますが、いちばんの好物というわけではないようです。

ではなぜニンジンだけが馬の好物として認識されているかというと、昔の日本において果物や砂糖は高級品で、馬に与えるものではなかったからです。比較的安価かつ甘みのあるニンジンを与えていたことが、現代の「馬の大好物はニンジン」のイメージへと繋がっていきました。

その⑤鯉

5月が近づくと、鯉のぼりが空を泳ぐ光景が見られますね。鯉も、端午の節句に用いられる生き物の定番といえるでしょう。

江戸時代中期の武家では、男の子が生まれると端午の節句に「のぼり」を飾る風習がありました。それを見た町人たちが中国故事の「鯉の滝登り」に倣い、鯉を模したのぼりを飾るようになったことが鯉のぼりの始まりになっています。

【鯉の滝登り】
中国の黄河には「竜門」と呼ばれる滝があり、この滝を登りきった魚は龍になれるという伝説があった。魚たちのなかで、滝を登ることができたのは鯉だけであった。

最初は紙に鯉の絵を描いたものだったのが、次第に布製になり、サイズも大きくなり、鯉の色も黒一色から赤色と青色が加わり…と、徐々に現代の鯉のぼりの姿になっていったようです。

ちなみに実際の鯉はジャンプが苦手で、大きな滝を登りきるほどの力は無いようです。ただし小柄な個体は2mほど跳ねることがあるらしく、小さな段差なら登ることができるかもしれません。

【余談】鯉のぼりの上の「アレ」は何?

鯉のぼりのいちばん上には、カラフルでひらひらしたもの風車のようなものがついていることが多いですよね。その名前と役割をご存知でしょうか?

ひらひらは「吹き流し」

風車は「矢車」

と呼ばれています。

吹き流しは青、赤、黄、白、紫の5色から成っていることが多く、これには万物を担う「木」「火」「土」「金」「水」5つの要素が悪いものを遠ざけてくれますように、という願いが込められています。

矢車も魔除けの役割をもつとともに、幸運が四方八方から訪れますように、という意味があります。また矢車の上についている球体は「天球」と呼ばれ、「ここで男の子が生まれました、どうぞよろしく」という神様への目印とされています。

お部屋で楽しむかわいい鯉のぼり

男の子の立身出世と、幸運に恵まれた健やかな成長を祈る鯉のぼり。近年は居住環境の変化からか、室内で飾れるコンパクトなタイプが人気を呼んでいます。

今回は、インテリアとしても飾れるかわいい鯉のぼりをご紹介します!

こいのぼり ちりめん室内鯉 選べる6種 ミニサイズ

サイズ:横幅17cm×奥行12cm×高さ45cm

ころんと可愛らしい、3匹の鯉たちが仲良く泳ぐ室内鯉のぼり。ちりめん素材が柔らかな雰囲気を醸します。ミニサイズなので、ちょっとしたスペースにも飾ることができます。

デザインは選べる6種類!写真はパステルカラーがモダンな「mizu」です。単体で飾ってもお好みの節句飾りと合わせても、お部屋を華やかに彩ってくれますよ。

まとめ

前編・後編と2回にわたって、五月人形に用いられる動物や生き物について解説しました。どの生き物も縁起が良く、それぞれ優れた力を司っていることが分かったと思います。

端午の節句は、大切なお子さまの健やかな成長を祈る特別な日。五月人形をお選びの際には、ぜひ今回の記事を参考にしていただければ幸いです!

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