衣裳着雛人形は実際の着物を着付けたお雛様=現代のひな人形の代表!
雛人形の違いについて考えてみる
衣裳着(衣装着)雛人形の歴史
現在主流の雛人形として、衣裳着と木目込みの2大雛人形が主流となっています。 割合としてはお雛人形の約7割程度が衣裳着(いしょうぎ)のお雛様で、残り3割の多くが木目込みのお雛様やちりめんタイプ、その他様々といわれています。 割合の通り、おそらくほとんどの方がイメージされているお雛様は衣裳着ではないかと思われます。 衣裳着のお雛様は江戸時代の初め頃に京都で発祥したと言われており、その後五代将軍・徳川綱吉の頃に江戸に招かれた京都の人形師などによって多く作られ広まりました。 江戸中期の人形師、原舟月が創作した古今雛の様式を踏襲したもので、今日まで数百年にわたり受け継がれています。
衣裳着の雛人形とは?
衣裳着とは、平安時代の宮廷装束を模したもので、お殿様は色目で位などを表していたりしています。お姫様衣裳着の代名詞として十二単(じゅうにひとえ)といえば分かりやすいのではないでしょうか。 何枚もの衣を重ね、袖や襟、裾などに色の重なりが美しく表れます、これを襲(かさ)ね色目と呼んでいます。 お人形にこれらの衣裳を着付ける事で衣裳着雛人形が完成します。
ちなみに、十二単と言えば十二枚の着物を重ねた衣裳と思われる方も多くいらっしゃると思います。 昔は重ね袿(うちき)の枚数を単で表していましたので、文字通り12枚の袿を重ね着するという印象がついたのかもしれませんが、実際は十二単=十二枚のお衣装という訳ではございません。 例をあげますと、十二単の中心となる五衣(いつつぎぬ)は当初重ねる枚数にきまりがなく、時代によって8枚、10枚、15枚と重ねる枚数も多くなり、十二単の構成が十二枚ではなかった事がよくわかります。 後に五衣の名前の通り5枚を重ねるという決まりができましたが、十二単自体も俗称として考えて頂ければ良いです。
季節の移り変わりで色合いなども変化
衣裳着雛人形に着付けられる衣裳着の襲ね(かさね)には色を単に合わせるのではなく、草花や自然をイメージして季節の移り変わりや心情などを表しています。 これは雛人形であっても実際の十二単であっても同じです。 表地と裏地の配色で春・夏・秋・冬・通年など季節ごとに衣替えをしており平安貴族の美意識の高さがわかります。
襲ね方には季節と名前があり、季節感を取り入れた組み合わせが美しいグラデーションを構成します。 春の襲ねであれば、表地が白で、裏地が蘇芳(赤系の色)で梅。 表地が白で裏地が赤は桜。 夏の襲ねでは、表地が赤で、裏地が朽葉(赤系の色)で百合。 表地が薄蘇芳で、裏地が青は撫子。 秋の襲ねは、表地が赤で、裏地が濃赤で紅葉。 表地が白で、裏地が青は菊。 冬の襲ねとして、表地が白で、裏地が紅梅は雪の下。 表地が蘇芳で、裏地が赤は椿。と、様々な構成があり、他にもいくつもの種類があり移り行く自然の儚さや美しさを表現しているんです。
襲(かさね)の構成により印象の違いがでてきますので、お人形の表情と共にお雛様を選ぶ基準にしてみてはいかがでしょうか?
着せ方にも様々な方法がある
絢爛豪華からシンプルまで
全身を重ね着したものから衿と袖だけを貼り付けたお雛様まであり、七段飾りや親王平飾りなどのようにお人形を直接手に取って飾ったり全身を見る事ができるお雛様などは細かく作られていたり、収納飾りなどは収納箱に収納することが前提となるので小さくコンパクトな作りになっていたり、ケース飾りのように固定されたお雛様は固定してしまう部分は比較的簡易な作りになっているなど様々です。 用途によって豪華なものからシンプルなものまで作られているんです。 様々なお人形がございますので、一度見比べたりするのも面白いかもしれませんね。
使用生地や織り方も様々
お雛様の衣裳の材質にはも色々とあり、なめらかな光沢と柔らかさがある、正絹(しょうけん=シルク)生地や色付きの糸で織りなす西陣織や金糸を使用した金襴生地、無地生地に色付けをしていく友禅染め、生地を圧縮した絞り染めやちりめんなど様々な生地や製法が使用されています。 正絹や友禅、ちりめん生地などは柔らかい素材なのでお雛様の形が優しい感じになり上品さがでます。 西陣織や金襴生地などは厚手の生地になるので大きく豪華な見映えになります。見た感じでも違いがはっきりと分かる場合もありますので、じっくりとご確認頂く事をおすすめ致します。
また正絹(しょうけん)に対して人絹(じんけん=レーヨン等)の生地もございます。 人絹は光沢感や手触りなど絹と同等の特徴を持つレーヨンが使用されますが、こちらも石油原料の化学繊維とは違い自然に負担をかけない繊維として、正絹よりはコストパフォーマンスが良い素材ですが高級素材となっています。 生地の違いによりお人形の金額も変わってきますので、予算と相談しながら選んで行きたいですね。
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